―暑い!この部屋はなんてあついんだ…!!
食堂の扉をおもいっきり神田は開けた。
バンッという音が食堂に響く…
―ああ・・暑い、食堂もあついだなんて…。なんて設備がなってない所だ!!
神田はヨロヨロとジェリーのところへ行った。ジェリーは明るく話かけてきた。
「あら?どうしたの?そんなに汗だくで、コートでも脱いだら良いじゃない。」
「…うるさい。それより冷たい水をくれ。暑くてたまらん。」
「…?」
ジェリーは何か不思議そうな顔をしてしばらくしてポンと手を叩いた。
「ああっ任務か修行かしてきたの?そっかー。そうだよねぇ。じゃなきゃ可笑しいもんね。」
―?何言ってんだコイツ…?
神田はジェリーえを睨みつけた。
「早くよこせ。」
「ああっそうね。どうぞ☆」
ジェリーが差し出したコップはひんやり冷えていた。
神田はコップを手にとると
つるっ…。
ガシャーン!!
周りが音のした方に振り向いた。視線の先には神田が立っていた。
神田の下の方にはコップが割れ、水が飛び散っていた。
「…すまない…。」
ジェリーは慌てた。神田も戸惑った。
「ううん。いいのよ。疲れてるもんね。神田チャン先座ってたら?私が新しいのもってくよ。」
「…すまない…。」
神田は下を向きながら奥の席に向った。
イスにどかっと座ると今度は頭が重く感じる。
重力に引っ張られるように神田は机に顔を伏せた。
―なんだこの感じは…。暑さで頭までやられたのかよ…。
ジェリーがパタパタと走ってきてコップを冠だの顔の横にドンと置く。
もう少し優しく置いた方がコップの為だと思う。
「はいどうぞ。さっきより冷たくしといたから。」
「ああ…すまない。」
―でも何か…。手が伸びない…。飲む気がしなくなった…。
周りから冷たい視線がくる。多分ファインダーの奴らだ。
その視線からはファインダーがいやみったらしく笑ってるように感じた。そいつらにキレようとしているのに、体は動いてくれない。
―フン。後で覚えてろよ。
神田は小さくそんな事を思っていた。
ガタッ。
横に誰かが座った音がした。その後に「こくこく」と水を飲む音がして、コトッとコップを置いた音がした。
―誰だよ。俺は暑いんだから、離れてくんねェと…。
「あれ?ユウじゃん!丁度よかった。今探してたんさ。」
―…。ラビ…か…。ぜてぇ嘘だな。俺がココにいると知って座ったんだろ…。
「あっ!ゴメンよ!これユウの水?飲んじゃったさ。ヘヘヘッ。」
ラビの能天気な声が神田の左耳から入って右耳から出た。
「・・・ユウ?…」
ラビが不安そうに神田を見つめる。
そっと神田の肩に手を乗せた。
「…何だよ…。」
神田は凄くメンドくさそうに答えた。
「ああっ良かったさ。ユウ調子悪いのかと思ったじゃんか!」
「…暑いんだ…。」
「えっ!?そう?今日は涼しいさ。」
神田は何言ってんだコイツといわんばかりの顔で顔をあげた。
「はぁ?」
―何かラビの顔が…ぼやけて見える…。やっぱあついからだ…。
ラビは凄くビックリした顔をした。
「うおう!!ユウ!大丈夫!!?顔真っ赤いぞ!!!ねねねっ熱でもあるんじゃないの??」
ラビが神田のデコに手をあてて大げさなリアクションをした。
「あっちー!!こりゃ大変さ!!早く休むさ!!」
いちいちうるさい奴だ。
「…いいよ。大丈夫だ。」
「ダメダメダメ!!酷くなっちゃうさ!!!」
ラビは無理やり神田を引っ張って足早に食堂を出た。
 
 
 
 
額にふっと冷たいものがのる。
神田は目を覚ました。自分の部屋じゃない…。
…ここは…?
途中から意識が無かったのか、熱でラビに連れられて来たことを忘れたのか、
此処が何処だかわからない。
神田はベットから起き上がった。額からドサッとタオルが落ちた。手にとるとまだちょっと冷たく、自分の熱で生暖かいところがあった。
机の上には水の入ったコップ一杯とオケの中に氷水。その中にはタオルが一枚入っていた。
ベットの横にある窓は開いていた。カーテンが踊りだすとそよそよと心地よい風が入ってきた。
 
奥のクローゼットからラビの声がする。
「ありゃ?これはいっ胃腸薬?違う違う…。」
ポイッと胃腸薬がクローゼットの方から神田の方に飛んできて、足元に落ちた。
「うーと、げっ…げっ…解熱剤…?違う違う…。あー!!!違くない!!」
気付いたのがちょっと遅かったか薬は神田におもいっきりぶつかった。
 
「―痛っ」
「あれ??ユウ起きた?」
ラビがそこらへんに散乱している箱の山からひょっこり顔を出した。
そしてテクテクと神田の方へ歩いてきた。
ラビが神田の足元に散らばった薬を摘み上げて
「これ、ブックマンがよく効くって俺にくれたやつだから、すぐよくなるさ。」
薬を袋から出して神田の手に乗せた。
「えーっと、ユウは18だもんで…2錠…かな?まぁ飲んでさ。」
「…。」
なかなか飲まない神田にラビは不思議がっていたが、やがてニヤリとして神田の顔を覗き込んだ。
「もしかして…ユウはお薬嫌いかなぁ〜」
「―っ///んなことねェよ…。こっこれホントに大丈夫なんだろうな?」
ラビは疑った顔をしながらもニヤニヤ笑っている。
「のっ飲むよ!」
神田は口に中に薬を放り込むとぐいっとコップの水で流し込んだ。
「ぐっ!!!」
胃を手で握られているような感じ。
何を飲ませやがったんだコイツ…。
神田がラビを睨みつけるとそれまでニコニコしてたラビが急に不安そうな顔になった。
「え?どうしたユウ?んっ?ああ―――!!それ胃腸薬!!!御免ユウ!!大丈夫?こっちだよ!うわぁ〜どうしよ〜!!」
「ごたごたうるせぇ!!それよりうぇっ洗面器…。」
「ああ〜ん どうしよ〜!」
ラビがバタバタと走り回る。
「早ぐぅ…」
「どうしよ〜!!」
「…(怒)」
何も聞く耳をもたないラビを神田は無視して外へ出た。
「ああ〜…あれ?ユウ?」
 
 
 
 
しばらくして神田が戻ってきた。中はシーンとしていてラビの姿も無かった。
ますます状態を悪化させやがって…。何処行ったんだあいつは…。
うっ。また気持ち悪くなってきた…。たしかあいつブックマンがどうしたかって言ってたな…。この薬…。
 
 
 
ラビがふらふらしながら帰ってきたのは神田が帰ってきてから約1時間は経っていた。
両手に袋を持っていて、ほとんど熱を下げるシートと風邪薬だった。
手でドアを開けられないので足で強引にドアを開けた。
「およ?」
ベットにはシャツとズボンの姿で神田が寝ている。寝ているといっても腰掛けたまま寝てしまったという感じである。
 
「…///可愛いな…。」
思わずそんな言葉が出てきた。
ハッ何を考えてるんさ俺は!ユウは男さ!!
 
ブルンブルンと首を横にふって神田の方に近づく。
せっかく買ってきたんだから…。はっといてやろう。
神田の額にシートをはった。
「んっんん…。」
神田が目を覚ますと心配そうに神田を見つめるラビが目に入った。
「…ラビ…?」
「ん?」
なんて優しい声なんだろう…。
「あの…俺はもう大丈夫だから…」
「え?」
ラビの顔に神田も戸惑う。
「いやっ風邪…うつっちゃいけないから…もういい…。」
「そうっでもいい」
「は?」
風邪がうつると言ってるのに、ラビはその場に座っている。
「・・・だから―っ」
「うつったっていいさユウがそのままよりずっとマシさ。」
そういい買い物袋の中からスポーツドリンクを取り出し「飲む?」っと聞くとコップに移しはじめた。
「はいっ。今度はちゃんとした飲み物さ!」
やけに自信が入っている。神田がゆっくりと口に運ぶのをラビはじっと見ている。
 
「…何だよ…。」
「!いやー・・ユウちゃん可愛いなと思って。」
「!?」
その言葉に凄く驚いた。多分ラビじゃなかったら殴ってるだろう。
「馬鹿じゃないの?」
噴出しそうになったスポーツドリンクを右手でぬぐいながら言った。
「そういうトコが可愛いんさ。」
ニコニコしながらそういうラビに無性に腹が立つ。だけどなんで、許せるんだろう。
顔が赤くなってるんだろう。何だかあつい。
「ユウは?」
「えっ?」
「だからぁ、ユウは俺の事どう思ってる?正直なこと言って」
そんなこと言われても…。
ラビの顔は真剣そのものだった。まっすぐ神田を見ている。神田はラビの視線に負けたのか目をそらす。
 
「さあな」
俺と目をそらしながらふっとこぼれる笑顔。ダメさぁ…俺完璧に負けた…。
ラビはベットに手をかけ、神田に顔をぐいっと近づける。
「正直なこと言って」
フッとまたユウの顔からこぼれる笑顔。やっぱ俺から?
ゆっくりと神田とラビの唇が重なる。もっと深くとラビの下は求めてく…。神田もラビの首に手をまわす。お互いを確かめ合うように…。
 
 
 
 
 
 
「なぁユウ。」
二人並んで座ってる。もう熱のことなんか忘れてた。
「俺さ。やっぱユウのこと好きみたい」
「知ってるよ」
 
ラビらしい言葉。多分それが俺が一番求めていたコトなんだろう…。
「知ってるよ」
もう一度小さな声で同じ言葉を繰り返してみる。
 
 
 
 
 
 
END。。
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